下呂温泉シネマテーク2001
チャップリン映画祭



 私にとってとても印象深い、忘れられない映画祭である。岐阜県の下呂温泉、ここにチャップリンの等身大のブロンズ像が立ち、地元の方々の尽力で2ヶ月に渡る映画祭が実現した。



▲会場のプチミュージアム
▼感動と再会


 11月から12月にかけ、3回にわたって下呂へ足を運ぶ。
 11 月3日(土)は最初の特別試写会。手作りの特設会場には、ハリウッド映画のレトロ看板が設置され、映画ポスターや写真が展示されていた。映画祭実行委員の中子さんはアメリカで映画の仕事に携わっていた方で、彼のコレクションが中心らしく、それらの展示が、街の皆さんの映画への思い、街の活性化への思いを凝縮して素敵な空間を作っていた。芝居小屋っぽい温かい空間だったのだが、いっぱいの招待客の前で、私は随分と緊張していた記憶がある。



▲写真で見る
 ハリウッド映画100年展
▼「面白そうじゃん」


 4日(日)は、下呂温泉旅館会館4階で、篠田正浩監督の講演会の後、『黄金狂時代』の活弁公演。一番後ろで篠田監督の講演に聞き入ってしまった。早稲田大学の駅伝選手として活躍していた青春時代から夏目雅子とのエピソード、岩下志麻との日常まで垣間見せてくれるざっくばらんなトークは、映画ファンにはたまらなく魅力的だったし、とても面白かった。終わった後に篠田監督に紹介していただく。一言の励ましにとても感激したことを思い出す。



▲「ここに来られて嬉しい」
▼写真とポスターがずらり


 10 日(土)11日(日)は、ともに『キッド』1日3回公演。1日に3回の公演を初めて体験した。テレビや新聞の取材もあったが、何より地元の方々や温泉に来ているお客さんたちに来てほしかった。観客の少ない回は、せっかくこんなに素敵な企画をやっているのにもったいない!と歯がゆい気持ちもあった。老舗温泉街の若い人たちが力を合わせ、手弁当で作り上げている映画祭。ここに行き着くまで大変なご苦労があったはずである。私は「面白いから行こうよ」「佐々木さんが来てるんだから行こうよ」と言ってもらえる弁士にならなければ本当に申し訳ないと思った。大人にも子供にも、もっともっと喜んでもらえる弁士にならなくてはー。

 「キッド」のポスター
 だが、この時の忘れられない感激がある。次の日の朝に、ある女性が「昨日は感動しました。ありがとうございました」とわざわざ花束を持ってきて下さったこと。1日3回の公演に3回とも来てくれた小学生の男の子がいたこと。チャップリンは観れば観るほど面白い。1回目に食い入るように観ていた彼は、2回目はさらによく笑い、3回目、友達を連れてやって来て、観ながら「次が面白いんだよ!チャーリーがさあ〜、」と友達に得意げに言い始める。何人かでもいい。チャップリンの面白さに笑い、優しさに感激して、ワクワクする映画体験をした子どもたちがいたことは本当に嬉しかった。「面白かった〜!」と言って元気に自転車で坂道を登っていった少年たちの姿に、私は「ああ、この仕事を続けよう」と思った。



▲「ありがとう」
▼「面白かっただろ〜」


 12月24日(月)。クリスマス映画会と平和への祈り。夕暮れ、チャップリンのブロンズ像の周辺でローソクに火を灯し、皆で世界平和を願う。チャップリンの望んだ世界平和を、温泉街の人々も、実行委員も、観光客も、皆がローソクを灯して祈る。12月下旬の下呂の、本当なら霜の張りそうなブロンズ像が、温かい灯に囲まれ笑っているように見えた。
 最後の上演は『街の灯』。この街の灯がいつまでも暖かく灯り続けるようー。下呂温泉は何度でも行きたい温泉である。



▲下呂温泉旅館会館
▼チャップリンと一緒

 
 
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