城下町つるおか時代劇映画祭


 城下町鶴岡市は、藤沢周平のふるさと(そして私の母の故郷でもあります)。山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』や『隠し剣 鬼の爪』『蝉しぐれ』などの舞台、ロケ地として話題になっていることもあり、初めての時代劇映画祭が企画されました。リバイバルで話題になった『丹下左膳』の旧作各社共演や、『たそがれ清兵衛』の上映、そして活弁付きチャンバラ無声映画として『血煙高田馬場』『鞍馬天狗』をお楽しみいただきました。

 私は22日(月)に、藤沢周平の実家があった湯田川地区のコミュニティセンターで2回公演。地域の方々を中心にアットホームな上映会でした。その夜は、おかみさんが藤沢周平の教え子という、老舗の九兵衛旅館に宿泊。いい旅館なんですここがまた。
 次の23日(祝)は午後から鶴岡市営体育館で上演。ここは私も小さい頃からなじんできた体育館ですが、取り壊しを前に最後の大仕事。「海坂座」(藤沢周平の小説の海坂藩より)と名づけられ、ござが敷かれ、広さゆえにいくら炊いても温まらないストーブが置かれ、昭和初期の懐かしい雰囲気をかもしだす上映会場になっておりました。ここで行われた時代劇映画の看板展には県内から多数の応募があり、表彰式も行われ、展示された看板や懐かしの映画ポスターを皆さん目を細めて見ておりました。

 そして終了後、東京第一ホテル鶴岡での<シネマトーク&トークセッション>。映画評論家川本三郎先生と、藤沢周平原作の山田監督作品で方言指導をなさっている鶴岡市芸術文化協会会長山崎誠助先生とご一緒に、時代劇映画の魅力や城下町鶴岡の文化について、楽しいお話が繰り広げられました。
 大好きな鶴岡の文化の再認識もそうですが、何より嬉しかったのは、お二人の先生の「活弁」という映画文化に対する応援の言葉でした。「伝統芸能」にも「芝居」にも「映画」というジャンルにも入らず、現在、「伝えていかなければ消えていく。それはあまりにもったいない」ということをあまり意識されていない「活弁」ですが、これは日本独特の豊かな映画文化であり、語り文化なのです。昔、無声映画時代は、誰もが弁士の語り付きで映画を観ました。無声のまま観るという文化は当時の日本にはなかったのです。映画と弁士の語りが必ず一緒になっての鑑賞でした。当時を知る山崎先生は、この日の『鞍馬天狗』や『血煙高田馬場』を懐かしみ、楽しまれ、「日本は『活弁』を一つの芸能文化ジャンルとして伝えていってもいいんじゃないか、日本独特の芸術文化として保存し、育てていく必要があるのではないか」とステージから呼びかけて下さり、会場からワッと起こった拍手が忘れられません。
 それから1年経たぬうちに、フィルムセンターで、初のこども向け活弁上映会が開催され、私自身が出演できるとは思いませんでした。少々大袈裟ですが「国が子どもたちに向けて新たな映画文化教育に踏み出した」というところに居合わせられるとは、なんという幸いかと思います。









山崎誠助先生、川本三郎先生とともにシネマトーク。

 
 
 
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